配当所得を確定申告すると住民税はどうなる?
上場株式等の配当からは、通常、支払時に住民税5%が差し引かれています。申告不要を選べば、原則としてこの源泉徴収で住民税の課税も終了します。
一方、総合課税または申告分離課税で確定申告すると、配当所得が住民税の計算に反映されます。すでに差し引かれた住民税は、配当割額控除として精算されますが、合計所得金額が増えることによる別の影響には注意が必要です。
住民税非課税世帯に影響することがある
住民税非課税世帯に該当するかどうかは、世帯員の所得などを基に判定されます。源泉徴収済みの上場株式等の配当を申告すると、住民税上の合計所得金額に算入され、非課税基準を超えることがあります。
住民税非課税世帯から外れると、税額だけでなく、給付金、医療・介護の負担区分、保育料、各種減免制度などに影響する可能性があります。適用される制度は自治体や世帯状況によって異なります。
配当所得は社会保険料に影響する?
国民健康保険・後期高齢者医療・介護保険
国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、65歳以上の介護保険料などは、住民税上の所得を基に計算される部分があります。
上場株式等の配当を確定申告すると所得として反映され、翌年度の保険料が増えたり、医療機関の窓口負担割合や高額療養費の所得区分などに影響したりする場合があります。
申告による所得税の還付額だけでなく、翌年度の保険料まで試算することが重要です。
会社員の健康保険料
会社員本人の健康保険料や厚生年金保険料は、基本的に勤務先から受け取る給与や賞与を基にした標準報酬月額・標準賞与額で計算されます。そのため、本人が受け取った配当金が、通常の社会保険料へ直接加算されるわけではありません。
ただし、健康保険の被扶養者認定、70歳以上の医療費負担区分、各種給付の所得判定などには影響する可能性があります。
配当所得で扶養から外れることはある?
扶養には「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」があり、判定方法は異なります。
税法上の扶養
確定申告した配当所得は、原則として合計所得金額に含まれます。令和8年分、つまり2026年分の所得税では、扶養親族や同一生計配偶者の所得要件は、原則として合計所得金額62万円以下が基準の一つです。
申告した配当所得を加えることで基準を超えると、家族が扶養控除や配偶者控除を受けられなくなる可能性があります。配偶者については、62万円を超えても所得額に応じて配偶者特別控除を受けられる場合があります。
なお、申告不要を選んだ一定の上場株式等の配当は、税法上の合計所得金額に含まれません。
社会保険上の扶養
社会保険上の扶養は、税法上の所得ではなく、今後1年間の収入見込みなどを基に保険者が判断します。継続的に受け取る配当金が年間収入として扱われる場合もあるため、確定申告をしていないから必ず扶養収入に含まれないとは限りません。
配当収入が多い場合は、勤務先の担当部署、全国健康保険協会、加入している健康保険組合などに確認してください。
配当所得とふるさと納税の関係
配当所得を確定申告すると、住民税所得割額などが変わり、ふるさと納税の自己負担2,000円で収まりやすい寄附上限額も変わる可能性があります。申告所得が増えることで上限額が増えるケースもありますが、所得控除や税額控除、家族構成によって結果は異なります。
また、ふるさと納税のワンストップ特例を申請していても、配当所得、医療費控除、住宅ローン控除の初年度などを理由に確定申告をすると、ワンストップ特例は無効になります。
確定申告をする場合は、ワンストップ特例を申請済みの寄附を含め、その年に行ったすべてのふるさと納税を申告書へ記載する必要があります。
配当所得は年末調整で処理できる?
勤務先が行う年末調整は、主に給与所得に対する所得税を精算する手続きです。配当所得そのものを勤務先の年末調整に含め、総合課税や申告分離課税を選ぶことはできません。
- 申告不要を選ぶ場合:配当所得について原則として追加手続きは不要
- 総合課税を選ぶ場合:本人が確定申告を行う
- 申告分離課税を選ぶ場合:本人が確定申告を行う
ただし、配偶者控除や扶養控除の判定に使う「所得の見積額」には、申告する予定の配当所得を考慮する必要があります。年末調整後に扶養状況が変わった場合は、確定申告による精算が必要になることがあります。
非上場株式の配当は取り扱いが異なる
非上場株式等の配当や、大口株主等が受け取る一定の上場株式の配当には、原則として所得税および復興特別所得税20.42%が源泉徴収されます。上場株式等の一般的な配当とは異なり、住民税5%が支払時に一律で差し引かれる仕組みではありません。
一定の少額配当については所得税の確定申告不要制度を選べる場合がありますが、所得税で申告しなくても、住民税では総合課税として申告が必要です。非上場会社から配当を受け取った場合は、上場株式と同じ感覚で判断しないよう注意しましょう。
配当所得の課税方法を決めるための確認手順
- 配当の種類を確認する
国内株、外国株、上場株、非上場株、投資信託、REITなどを区分します。 - 年間取引報告書を確認する
配当金額、源泉徴収税額、株式の譲渡損益を確認します。 - 総合課税を試算する
給与や年金を含めた課税所得と、配当控除の対象額を確認します。 - 申告分離課税を試算する
上場株式等の譲渡損失や繰越損失と通算した場合の税額を確認します。 - 申告不要と比較する
源泉徴収だけで終了させた場合との差額を確認します。 - 税金以外の影響を確認する
住民税、国民健康保険料、介護保険料、扶養、非課税判定、行政サービスへの影響を確認します。
配当所得の申告で後悔しないためのポイント
配当所得の課税方法は、「課税所得が何万円なら必ず総合課税が得」と一律に判断できるものではありません。所得税の税率、配当控除の対象、株式の譲渡損失、住民税、社会保険料、扶養状況が人によって異なるためです。
特に、所得税と住民税で異なる課税方法を選べなくなった現在は、所得税の還付額だけを見て総合課税を選ぶと、家計全体の負担が増える可能性があります。
源泉徴収済みの上場株式等の配当を確定申告で申告するかどうかは、原則として当初の申告時に慎重に決める必要があります。申告後に「申告不要へ戻したい」「総合課税から申告分離課税へ変更したい」と考えても、修正申告や更正の請求では変更できない場合があります。
配当金額が大きい場合、繰越損失がある場合、住民税非課税世帯や扶養の基準に近い場合は、国税庁の確定申告書等作成コーナーで複数の方法を試算し、必要に応じて税務署、市区町村、税理士、加入している保険者へ確認することが大切です。
<参考サイト> 国税庁 / 厚生労働省 / 日本年金機構 / 全国健康保険協会 / 横浜市 / 岡山市 / 熊本市


