投資信託を保有していると、「信託報酬等実額通知書」という見慣れない書類が届いたり、運用画面に信託報酬の金額が表示されたりすることがあります。信託報酬は請求書を受け取って別に支払う費用ではなく、投資信託の資産から日々差し引かれ、基準価額に反映される運用コストです。本記事では、信託報酬の仕組みや計算方法、0.6%・1.5%・1.65%の費用差、NISAでの扱い、信託財産留保額との違い、通知書が届く理由や確定申告の要否までわかりやすく解説します。

この記事でわかること
- 信託報酬の基本的な仕組み
- 信託報酬が基準価額へ反映される流れ
- 信託報酬0.6%・1.5%・1.65%の費用差
- 信託報酬と信託財産留保額の違い
- 信託報酬等実額通知書が届く理由
- 通知書の見方と確定申告での扱い
- SBI証券・楽天証券・iDeCoでの確認方法
信託報酬とは?投資信託を保有中に負担する費用
信託報酬とは、投資信託の運用や管理に必要な費用として、保有期間中に投資信託の財産から継続的に差し引かれる費用です。「運用管理費用」と表示されることもあります。
投資信託では、投資先の選定や売買、基準価額の計算、書類の作成、資産の保管など、さまざまな業務が行われています。信託報酬は、主に次の会社へ配分されます。
- 委託会社:投資先を決め、ファンドを運用する
- 販売会社:口座管理や顧客への情報提供を行う
- 受託会社:投資信託の資産を保管・管理する
投資者が銀行口座や証券口座から信託報酬を直接振り込む必要はありません。投資信託の純資産から日々差し引かれるため、保有残高や基準価額を通じて間接的に負担します。
購入手数料とは異なる
購入時手数料は、投資信託を購入するときに一度だけ発生することがある費用です。一方、信託報酬は投資信託を保有している間、継続して発生します。
| 費用 | 発生する時期 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 購入時手数料 | 購入時 | 無料の投資信託も多い |
| 信託報酬 | 保有中 | 投資信託の資産から日々差し引かれる |
| 信託財産留保額 | 主に換金時 | 差し引いた金額が信託財産に残される |
購入時手数料が無料でも、信託報酬は発生することがあります。「購入手数料0円」と「保有コスト0円」は同じ意味ではありません。
信託報酬は基準価額からどのように引かれる?
投資信託の基準価額は、ファンドが保有する株式や債券などの時価に、利息や配当金などを加え、信託報酬を含む費用や負債を差し引いて計算した純資産総額を、総口数で割って算出します。
一般的な基準価額の考え方は次のとおりです。
基準価額=信託報酬などを控除した純資産総額÷受益権の総口数
公表されている基準価額は、原則として信託報酬を差し引いた後の金額です。口座の入出金明細に「信託報酬1,000円」と表示され、その金額が現金残高から直接引かれる仕組みではありません。
信託報酬は日々計算される
交付目論見書などには、信託報酬が「年率0.6%」「年率1.65%」などと記載されていますが、年末にまとめて1年分を引くわけではありません。
実際には、ファンドの純資産総額を基に日々計算され、投資信託の財産から差し引かれます。基準価額や保有残高は毎日変動するため、実際の負担額は「年初の残高×信託報酬率」と完全には一致しません。
同じ運用成績なら信託報酬が低いほど基準価額に有利
投資先、売買時期、分配方針などが完全に同じであれば、信託報酬が低い投資信託のほうが、費用控除後の基準価額には有利に働きます。
ただし、実際の投資信託は運用方法や投資対象が異なります。信託報酬が高い商品より、低い商品が必ず高いリターンになるとは限りません。
信託報酬の計算方法
信託報酬の年間負担額は、簡易的には次の計算式で確認できます。
年間信託報酬の概算額=平均保有残高×信託報酬率
たとえば、年間を通じた平均保有残高が100万円の場合の概算額は、次のようになります。
| 信託報酬率 | 100万円を1年間保有した場合の概算 |
|---|---|
| 年0.6% | 約6,000円 |
| 年1.5% | 約15,000円 |
| 年1.65% | 約16,500円 |
信託報酬が年0.6%の商品と年1.65%の商品では、平均残高100万円当たり年間約1万500円の差になります。
10年間保有すれば単純計算で10万5,000円の差になりますが、実際には基準価額、保有口数、追加購入、売却などが変動するため、毎年の負担額も変わります。また、費用として差し引かれた資金を運用できなくなるため、長期間では複利効果にも差が生じます。
税込と税抜をそろえて比較する
信託報酬を比較するときは、税込表示か税抜表示かを確認する必要があります。
たとえば、税抜年1.5%の信託報酬が、消費税を含めて年1.65%と表示されることがあります。年1.5%と年1.65%が別々の費用として二重に発生するわけではありません。
投資信託を比較するときは、すべて税込またはすべて税抜に統一しましょう。
信託報酬はどのくらいが目安?
信託報酬は低いほど費用負担を抑えられますが、すべての投資信託に共通する「適正な料率」が決まっているわけではありません。
一般に、市場指数への連動を目指すインデックス型は、個別企業の調査や銘柄選定を行うアクティブ型より信託報酬が低い傾向があります。また、複数の投資信託へ投資するファンド・オブ・ファンズでは、投資先ファンドの費用を含めた実質的な負担が高くなることがあります。
つみたて投資枠の上限は目安の一つになる
NISAのつみたて投資枠で購入できる公募株式投資信託には、長期・積立・分散投資に適した商品として、信託報酬の上限が設けられています。
| つみたて投資枠の投資信託 | 信託報酬の上限 |
|---|---|
| 指定インデックス型・国内資産 | 年0.5%以下・税抜 |
| 指定インデックス型・海外資産 | 年0.75%以下・税抜 |
| 指定インデックス型以外・国内資産 | 年1.0%以下・税抜 |
| 指定インデックス型以外・海外資産 | 年1.5%以下・税抜 |
税抜年1.5%は税込年1.65%に相当するため、年1.65%という表示だけで、制度上不適切な商品とは判断できません。ただし、つみたて投資枠の対象商品の上限であり、年1.65%が推奨される目安という意味ではありません。
同じ投資対象や運用方針の商品が複数ある場合は、信託報酬だけでなく、過去の運用実績、指数との連動性、純資産総額、売買コストなども比較しましょう。
NISAでも信託報酬はかかる?
NISAは売却益や一定の分配金を非課税にする制度ですが、信託報酬を無料にする制度ではありません。
NISA口座で投資信託を保有している場合も、課税口座と同じように信託報酬が投資信託の財産から差し引かれ、基準価額へ反映されます。
- NISA口座でも信託報酬は発生する
- 信託報酬を支払うためにNISA枠を追加消費するわけではない
- 信託報酬の控除によって基準価額が影響を受ける
- NISAだから信託報酬が非課税になるという仕組みではない
NISAでは運用益に税金がかからないため、信託報酬を含む運用コストの差が、そのまま長期的な資産形成へ影響しやすくなります。
実は、信託報酬と信託財産留保額は、支払う時期だけでなく、お金の行き先も異なります。解約時の受取額に関係する仕組みを次のページで確認しましょう。
信託報酬以外にも、目論見書を見なければ気づきにくい費用があります。次のページでは費用の違いを整理します。


