配当所得は総合課税と申告分離課税のどっちが得?
どの課税方法が有利かは、配当金額だけでは判断できません。給与や年金などを含めた課税所得、株式の売却損失、配当控除の対象、住民税や社会保険料への影響をまとめて比較する必要があります。
総合課税が有利になりやすいケース
総合課税は、次のような場合に有利になる可能性があります。
- 課税所得が比較的少ない
- 国内法人から受け取った配当控除対象の配当がある
- 適用される所得税率が低い
- 源泉徴収された所得税の一部を取り戻せる可能性がある
所得税の配当控除は、課税総所得金額等が1,000万円以下の場合、国内法人から受ける一般的な剰余金の配当について、原則として配当所得の10%が控除額の計算に使われます。1,000万円を超える部分については、控除率が異なります。
ただし、外国法人から受け取る配当、J-REITなど投資法人から受け取る分配金、一定の投資信託の分配金は、配当控除の対象外となることがあります。
申告分離課税が有利になりやすいケース
申告分離課税は、次のような場合に検討する価値があります。
- 上場株式等の売却で損失が出ている
- 前年以前から繰り越している上場株式等の譲渡損失がある
- 総合課税を選ぶと高い所得税率が適用される
- 配当控除の対象外となる配当が多い
例えば、上場株式等の売却で30万円の損失があり、申告分離課税を選んだ上場株式等の配当所得が20万円ある場合、一定の要件を満たせば損益通算によって配当所得を0円まで減らせます。
損益通算しても控除しきれなかった上場株式等の譲渡損失は、確定申告を継続することなどを条件として、翌年以後3年間にわたり繰り越せる場合があります。
申告不要が有利になりやすいケース
税金の還付だけを見ると総合課税や申告分離課税が有利に見えても、確定申告によって配当所得が合計所得金額に算入されると、住民税や社会保険料などが増えることがあります。
次のような場合は、あえて申告しない方が家計全体では有利になる可能性があります。
- 株式の譲渡損失がなく、損益通算をする必要がない
- 国民健康保険料や介護保険料への影響が心配
- 住民税非課税世帯の判定に近い
- 家族の税法上または社会保険上の扶養に入っている
- 行政サービスの所得要件に近い
配当所得税還付金はどのように受け取る?
「配当所得税還付金」という名称の独立した給付制度があるわけではありません。確定申告によって本来納める所得税額を計算し直し、すでに源泉徴収された所得税が本来の税額を上回っていた場合に、その差額が還付されます。
還付が生じる代表例は、総合課税を選択して配当控除や所得控除を適用した結果、源泉徴収済みの所得税よりも最終的な所得税額が少なくなるケースです。
ただし、次の点には注意が必要です。
- 源泉徴収された税額が0円なら、原則として還付できる税金もない
- 所得税が還付されても、翌年度の住民税や保険料が増える場合がある
- 未納の税金がある場合は、還付金が充当されることがある
- 外国株式の配当は配当控除の対象外だが、外国税額控除を検討できる場合がある
配当所得と損益通算できるもの・できないもの
損益通算できる代表例
申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得は、一定の上場株式等の譲渡損失と損益通算できます。源泉徴収ありの特定口座で配当金を受け入れている場合は、同じ口座内で証券会社が自動的に損益通算していることもあります。
総合課税では株式の譲渡損失と通算できない
総合課税を選択した配当所得は、上場株式等の譲渡損失との損益通算対象になりません。配当控除を利用したい場合は総合課税、譲渡損失と相殺したい場合は申告分離課税というように、目的によって選択肢が変わります。
一般株式等の損失とは自由に通算できない
非上場株式などの一般株式等と、上場株式等は税務上の区分が異なります。一般株式等の譲渡損失を、上場株式等の配当所得や譲渡利益から自由に差し引くことはできません。
税率だけで決めるのが危険な理由
以前は、所得税では総合課税を選び、住民税では申告不要を選ぶ方法が利用されることがありました。しかし、令和6年度の個人住民税、つまり令和5年分の所得税の確定申告以後は、上場株式等の配当について所得税と住民税で異なる課税方法を選ぶことができません。
所得税で総合課税または申告分離課税を選んで確定申告すると、住民税でも同じ課税方法となり、配当所得が住民税上の合計所得金額などに算入されます。
所得税が数万円戻っても、住民税や保険料、扶養判定まで含めると負担が増える場合があります。見落としやすい影響を次のページで確認しましょう。


