機関投資家とは?空売り残高・動向・足跡の見方を個人投資家向けに徹底解説

機関投資家はどのように銘柄を選ぶ?

機関投資家の銘柄選びに共通する一つの方法はありません。顧客との契約、投資信託の運用方針、連動する指数、目標リターン、許容リスクなどによって異なります。

企業の業績や価値を分析する

企業の売上高、利益、キャッシュフロー、財務状態、成長性などを分析し、現在の株価が企業価値に対して割安かを判断する方法です。

主な確認項目には、次のものがあります。

  • 売上高・営業利益の成長率
  • 利益率と資本効率
  • 営業キャッシュフロー
  • 有利子負債と手元資金
  • 競争力と市場シェア
  • 経営陣の資本配分方針
  • 株価収益率や株価純資産倍率
  • 配当や自社株買い

指数に連動して売買する

インデックスファンドなどのパッシブ運用では、TOPIXや日経平均株価など、対象指数の構成に近づくように銘柄を保有します。

指数へ採用された企業を買い、除外された企業を売る場合がありますが、企業の将来性を個別に評価して売買しているとは限りません。

数値モデルを使う

クオンツ運用では、株価、出来高、業績、財務指標、値動きの大きさなど、多数のデータを数値モデルで処理して銘柄を選びます。

割安度、収益性、成長性、株価の勢いなどの要因を組み合わせる方法があります。取引ルールは機関ごとに異なり、一般には詳細がすべて公開されるわけではありません。

企業と対話する

長期運用を行う機関投資家は、企業の経営陣と対話し、経営戦略、ガバナンス、資本政策、事業リスクなどを確認する場合があります。

日本版スチュワードシップ・コードでは、機関投資家が投資先企業との建設的な対話などを通じて企業価値の向上と持続的成長を促し、顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任が示されています。

機関投資家が選びやすい銘柄の特徴

すべての機関に共通する条件ではありませんが、大規模資金を運用する場合には、次の項目が重視されることがあります。

  • 十分な時価総額がある
  • 日々の売買代金が大きい
  • 株式を大量に売買しても価格が動きすぎない
  • 決算や事業情報の開示が充実している
  • 経営陣との対話体制が整っている
  • ガバナンス上の重大な問題が少ない
  • 運用対象の指数や投資方針に合っている

小型株へ投資する機関投資家も存在します。しかし、売買高が少ない銘柄では、希望する株数を買うだけで株価を押し上げ、売却時には株価を下げる可能性があります。

機関投資家の代表的な運用手法

運用手法 主な内容
アクティブ運用 銘柄を選別し、指数を上回る成果を目指す
パッシブ運用 特定の株価指数に連動する成果を目指す
クオンツ運用 数値モデルやデータを使って売買する
ロング・ショート 買いと空売りを組み合わせて運用する
裁定取引 関連する商品の価格差を利用する
イベント投資 企業買収、再編、指数入れ替えなどに注目する
ヘッジ取引 保有資産の値下がりリスクを抑える
エンゲージメント 企業との対話を通じて価値向上を促す

「機関投資家の手口」という言葉が使われることがありますが、通常の運用活動まで不正な行為と決めつけるのは適切ではありません。

機関投資家にも金融商品取引法や取引所規則が適用され、仮装売買、風説の流布、相場操縦、インサイダー取引などは禁止されています。

機関投資家が空売りする理由

空売りとは、株式を借りて売却し、後から買い戻して返却する取引です。機関投資家の空売りは、株価下落だけを狙う目的とは限りません。

株価下落による利益を目指す

企業の業績悪化や過大評価を予想し、株価が下がった後に買い戻して差額利益を目指す方法です。

ただし、空売り後に株価が上昇すれば損失が発生します。株価の上昇には理論上の上限がないため、空売りの損失も大きくなる可能性があります。

保有株式の値下がりをヘッジする

特定の企業や業種の株式を保有しながら、株価指数先物や関連銘柄を空売りし、市場全体の下落による影響を抑える方法があります。

空売り残高が増えた機関でも、別の口座や商品で株式を保有している可能性があります。公開された空売り情報だけでは、その機関の投資全体が弱気なのか判断できません。

銘柄間の価格差を利用する

割安と判断した銘柄を買い、同業種で割高と判断した銘柄を空売りするロング・ショート取引があります。

市場全体の上下より、2銘柄の価格差の変化から利益を目指す方法です。

転換社債やデリバティブをヘッジする

転換社債、オプション、先物などのポジションに伴う価格変動リスクを抑えるため、対象株式を空売りする場合があります。

この場合、企業の将来性に対して単純に弱気だから空売りしているとは限りません。

指数やファンドのリスクを調整する

資金の流入・流出や指数構成の変更へ対応するため、現物株、先物、ETF、空売りを組み合わせて一時的にリスクを調整する場合があります。

機関投資家の空売り残高はどこまで公開される?

上場株式の空売りポジションについては、発行済株式総数に対する空売り残高割合が一定水準へ達すると、報告・公表の対象になります。

  • 残高割合が0.2%以上:原則として報告対象
  • 残高割合が0.5%以上:原則として公表対象
  • 報告水準以上で0.1%刻みの変動:変更報告の対象
  • 公表後に0.5%を下回った場合:その旨が公表される

東京証券取引所は、取引参加者から報告を受けた空売り残高のうち、公表基準に該当する情報を原則として毎営業日に掲載しています。

公開残高は空売り全体を示さない

公表されるのは、報告者ごとに公表水準へ達したポジションです。0.5%未満の空売りや、報告義務がない取引まで、すべて表示されるわけではありません。

複数の機関がそれぞれ0.5%未満の空売りを保有している場合、合計残高が大きくても機関名別の一覧には表示されない可能性があります。

空売り残高が減っても買い戻したとは限らない

残高数量が減少した場合、買い戻しによって返済した可能性があります。一方、株式数の変化、ポジションの移管、計算対象の変更などが影響する場合もあります。

公開数字だけで、どの価格で買い戻したか、今後株価が上昇するかを断定することはできません。

機関投資家の空売りで株価は下がる?

大規模な売り注文は、短期的に株価を押し下げる要因になる場合があります。しかし、株価下落の原因を一つの機関投資家だけに結び付けることはできません。

株価は、次のような多くの要因で変動します。

  • 企業の決算や業績予想
  • 金利・為替・景気
  • 海外市場の動向
  • 個人投資家や事業法人の売買
  • 投資信託への資金流入・流出
  • 指数の構成変更
  • 信用取引の需給
  • 先物・オプション取引

空売り残高が増えている間に株価が上昇する場合もあります。空売りした投資家が買い戻せば、買い注文が発生するため、将来の買い需要になる可能性もあります。

「機関投資家の足跡」は一つのチャートだけでは確認できません。次のページでは、公式データを使った確認手順とランキングの注意点を解説します。