短期売買は禁止されている?守るべき規制
一般の個人投資家が、公開情報に基づいて自己資金で株式を短期売買することは、原則として禁止されていません。ただし、短期間の取引であっても、インサイダー取引、相場操縦、風説の流布などの不公正取引は金融商品取引法で禁止されています。
未公表の重要事実を知った場合の売買
会社関係者などが、業績修正、合併、増資、公開買付けなどの未公表の重要事実を職務等に関して知り、公表前に対象株式を売買すると、インサイダー取引規制に違反する可能性があります。
会社関係者から未公表の重要事実を伝えられた情報受領者も規制対象となる場合があります。「自分で会社から直接聞いたわけではない」「資金が必要だった」という事情だけで、規制の対象外になるとは限りません。
勤務先によっては、法令とは別に、役職員の株式売買について事前申請、売買禁止期間、最低保有期間などの社内規程を設けている場合があります。勤務先や関連会社の株式を売買する際は、社内規程を必ず確認してください。
見せ玉や根拠のない情報発信は短期売買でも禁止
約定させる意思がない大量注文を出して相場に影響を与える「見せ玉」、自分同士または協力者同士で売買を成立させる仮装・馴合売買、株価を動かす目的で根拠のない情報を広める行為などは、不公正取引に該当する可能性があります。
注文を約定前に取り消す行為がすべて禁止されるわけではありません。しかし、他の参加者を誤解させたり、相場を人為的に動かしたりする目的で注文と取消しを繰り返す行為は問題になります。SNSや掲示板で保有銘柄について発信する場合も、虚偽や合理的根拠のない情報を掲載してはいけません。
短期売買利益の返還請求とは
金融商品取引法第164条には、上場会社等の役員または主要株主が、自社の特定有価証券等について買付け後6か月以内に売却し、または売却後6か月以内に買い付けて利益を得た場合、会社がその利益の提供を請求できる制度があります。
これは、役員や主要株主が職務や地位によって得た秘密を不当に利用することを防ぐための制度です。通常の個人投資家全員に適用されるものではなく、上場会社等の役員または主要株主という特定の立場が対象です。
会社が請求しない場合、株主は会社に対して請求するよう求めることができます。その要求後60日以内に会社が請求しないときは、一定の要件のもとで、株主が会社に代わって請求できる仕組みがあります。
役員や主要株主には、別途、売買報告書の提出が必要となる場合もあります。対象となる有価証券、取引の組合せ、利益の計算には専門的な判断が必要なため、該当する立場では会社の法務・コンプライアンス部門や専門家への確認が必要です。
不動産の短期売買と税金|「購入から5年」だけで判断しない
個人が土地や建物を売却した場合、売却した年の1月1日時点における所有期間によって、長期譲渡所得と短期譲渡所得に区分されます。
- 長期譲渡所得:売却年の1月1日時点で所有期間が5年を超える
- 短期譲渡所得:売却年の1月1日時点で所有期間が5年以下
例えば、2026年中に不動産を売却する場合、2020年12月31日以前に取得したものは原則として長期、2021年1月1日以後に取得したものは短期に区分されます。取得日から売却日までの単純な経過年数だけでは判断しない点が重要です。
短期譲渡所得の税率
課税短期譲渡所得には、所得税30%、住民税9%が適用され、さらに所得税額に対する復興特別所得税がかかります。課税短期譲渡所得は、基本的に次の式で計算されます。
譲渡価額-取得費-譲渡費用-適用できる特別控除額=課税短期譲渡所得金額
不動産の短期売買では税金のほか、仲介手数料、登記関連費用、印紙税、ローン費用、修繕費なども発生し得ます。売却価格が購入価格を上回っていても、すべての費用と税金を差し引くと利益が残らない場合があります。
居住用財産の特例などを利用できる可能性もありますが、適用条件は取引内容によって異なります。売買契約前に、税理士や不動産取引に詳しい専門家へ確認することが重要です。
「短期売買有価証券」「短期売買商品」は法人税務の専門用語
短期売買有価証券という言葉は、単に個人が短期間だけ保有した株式を意味するものではありません。法人税基本通達では、法人が有価証券の取得日に、短期売買目的で取得したものである旨を所定の勘定科目によって区分したものなどを指す専門的な用語として使われています。
実際に短期間で売買していたり、売買回数が多かったりするだけで、自動的に短期売買有価証券へ分類されるわけではありません。取得時の帳簿上の区分が重要です。
「短期売買商品等」も、法人が保有する一定の資産について、譲渡損益や期末の時価評価損益を扱う法人税法上の用語です。個人向けに販売される「短期売買専用の商品」という意味ではありません。法人で該当する資産を保有する場合は、会計処理と税務処理を税理士等に確認してください。
短期売買で失敗を防ぐための最終チェック
- 生活に必要な資金を使っていないか
- 1回当たりと1日当たりの損失上限を決めたか
- 購入前に利益確定、損切り、保有期限を決めたか
- 手数料、金利、貸株料、税金を含めて計算したか
- 出来高や売値と買値の差を確認したか
- 決算発表や重要な適時開示の予定を確認したか
- NISA枠が当年中には復活しない点を理解したか
- NISAの損失を損益通算できない点を理解したか
- 勤務先の株式売買規程を確認したか
- 未公表情報や根拠不明の情報を利用していないか
- 取引理由と結果を記録しているか
まとめ|短期売買は利益より先に損失管理を決める
短期売買は、短期間で資金を動かせる一方、売買回数の増加によるコスト、急な価格変動、感情的な判断などの影響を強く受けます。成功を保証する銘柄や、必ず利益になる手法はありません。
株式では流動性と注文方法、税金、損切り条件を確認し、NISAでは年間投資枠と損失の取扱いを理解する必要があります。投資信託では基準価額の決まり方と換金条件、不動産では売却年の1月1日を基準とする5年ルールが重要です。
また、一般的な短期売買そのものは原則として禁止されていませんが、インサイダー取引、相場操縦、風説の流布は取引期間にかかわらず禁止されています。上場会社の役員や主要株主には、6か月以内の自社株売買による利益について返還請求を受ける制度もあります。
まずは少額で取引の仕組みを確認し、利益の目標よりも、損失額、取引数量、売却条件を先に決めることが基本です。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品、不動産、取引方法の購入または売却を推奨するものではありません。
<参考サイト>
金融庁「NISA特設ウェブサイト」 / 国税庁「株式・配当・利子と税」 / 国税庁「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」 / 国税庁「土地や建物を売ったとき」 / 国税庁「短期譲渡所得の税額の計算」 / 国税庁「法人税基本通達・有価証券の時価評価損益」 / e-Gov法令検索「金融商品取引法」 / 金融庁「役員及び主要株主の売買報告制度について」 / 証券取引等監視委員会「不公正取引規制違反に係る課徴金制度について」 / 日本取引所グループ「インサイダー取引規制」 / 日本取引所グループ「相場操縦規制」 / 一般社団法人投資信託協会




