BPSの目安は?「○円以上なら高い」という基準はない
BPSを見る際に最も重要なのは、BPSの絶対額には全企業共通の目安がないという点です。
例えば、
- A社:BPS 300円
- B社:BPS 1,500円
という2社があっても、B社のほうが優良企業とは判断できません。
1株をどの大きさに分割しているかが企業によって異なるからです。
A社の株価が600円ならPBRは2倍です。一方、B社の株価が750円ならPBRは0.5倍です。
同じBPS比較でも、株価との関係を加えると評価は大きく変わります。
BPSの「高さ」を他社と単純比較しない理由
株式分割でもBPSは変化します。
例えばBPSが2,000円の企業が1株を2株に分割し、その他の条件が変わらなければ、1株当たりのBPSは概ね1,000円になります。
しかし、それだけで企業全体の純資産価値が半分になったわけではありません。
企業会計基準委員会の適用指針でも、株式分割や株式併合が行われた場合の1株当たり純資産の表示について調整するルールが設けられています。
そのため、BPSの絶対額だけで企業同士をランキングする方法は適切とはいえません。
BPSを見るなら「推移」が重要|5年前より増えている?
BPSの活用方法として分かりやすいのが、同じ企業の時系列比較です。
例えば株式分割などの影響を調整した同一基準で、BPSが次のように推移しているとします。
| 年度 | BPS |
|---|---|
| 2022年 | 800円 |
| 2023年 | 860円 |
| 2024年 | 930円 |
| 2025年 | 1,010円 |
| 2026年 | 1,100円 |
この場合、普通株主に帰属する純資産が1株当たりで積み上がっていることが分かります。
企業が利益を継続的に上げ、その一部を配当に回し、残りを会社内部へ蓄積していけば、その他の条件が同じならBPSは増加しやすくなります。
BPSが高くなる・増える主な理由
BPSが増加する理由は一つではありません。代表的な要因には次があります。
1.利益を積み上げている
企業が利益を上げ、その利益のうち配当などで社外へ流出しなかった部分が利益剰余金として積み上がれば、純資産を増やす要因になります。
長期間利益を積み重ねる企業では、BPSも長期的に増加することがあります。
2.増資などで資本が増えた
新株発行によって資本を調達すると純資産が増えます。
ただし同時に株式数も増えるため、増資をしたからBPSが必ず増えるわけではありません。どの価格で何株発行したかによって1株当たりへの影響が変わります。
3.保有資産の評価額などが変化した
会計上、保有する有価証券などの評価差額が純資産へ影響する場合があります。その結果、利益剰余金とは別の要因でBPSが変動するケースがあります。
4.自己株式を取得した
自社株買いでもBPSが変化します。
ただし、「自社株買い=BPS上昇」と単純にはいえません。
自己株式を取得すると計算上の株式数は減少しますが、同時に会社の純資産も減少します。取得価格がそれまでのBPSより低いか高いかなどによって、残った株主のBPSへの影響は変わります。
5.株式分割・株式併合を行った
株式分割で株数が増えれば1株当たりBPSは小さくなり、株式併合で株数が減れば1株当たりBPSは大きくなります。
この変化だけを見て企業価値が増減したと判断してはいけません。
BPSが高い=良い会社ではない理由
BPSは資産の蓄積を見るうえでは役立ちますが、「その資産をどれだけ効率よく利益へ変えているか」までは分かりません。
例えば、純資産1兆円の企業が年間100億円しか利益を生まない場合と、純資産1,000億円で年間150億円を稼ぐ企業では、資本効率が大きく異なります。
このような違いを見る代表的な指標がROE(自己資本利益率)です。
日本取引所グループも企業価値を見る際、PBRだけではなく、ROEと株主資本コストの関係など「資本収益性」と「市場評価」の両面を見る考え方を採用しています。
したがってBPSが大きい企業を見る際には、
- ROEは高いか
- EPSは増えているか
- 売上・利益は成長しているか
- 余剰資産を抱えすぎていないか
- 資本を成長投資へ活用できているか
まで確認することが重要です。
BPSとROEにはどんな関係がある?
ROEは、企業が株主から預かった資本を使ってどの程度利益を生み出したかを見る指標です。
簡略化すると、
ROE=当期純利益÷自己資本×100
です。
企業が利益を積み上げ続けるとBPSは増えやすくなりますが、利益の伸びより自己資本の増加が速ければROEは低下することがあります。
そのため「BPSが毎年増えている」という事実だけを見るのではなく、増えた資本を使ってさらに利益を増やしているかを見ることが重要です。
BPSを使ったスクリーニング|絶対額ではなく複数条件で絞る
証券会社のスクリーナーなどで銘柄を絞る場合、BPSを「500円以上」など絶対額だけで指定する方法は、株式分割や企業ごとの株数の違いがあるため実用性が高いとはいえません。
より使いやすいのは、BPSと関連する指標を組み合わせる方法です。
例1.資産面から割安候補を探すスクリーニング
- PBRが業種平均より低い
- BPSが中長期で減少していない
- EPSが黒字
- 営業キャッシュフローがプラス
- ROEが改善傾向
PBR1倍未満だけで絞り込むのではなく、利益を生み出しているかを見ることで、「業績悪化によって株価が下がっているだけの企業」をある程度区別しやすくなります。
例2.BPS成長企業を探すスクリーニング
- 3~5年程度でBPSが増加傾向
- 同期間でEPSも増加傾向
- 営業キャッシュフローが継続的にプラス
- ROEが業種平均などと比べて低すぎない
- 有利子負債が急増していない
「BPSが増えている+利益も成長している」という組み合わせは、株主資本を積み上げながら事業も成長しているかを見る一つの方法です。
例3.PBR1倍割れ銘柄を見る場合
PBR1倍未満の銘柄を調べる際には、次の理由を確認してください。
- ROEが低いため評価されていないのか
- 利益が長期的に減少しているのか
- 成長市場ではなく縮小市場なのか
- 巨額の負債を抱えていないか
- 一時的な悪材料で売られているだけなのか
- 保有資産の帳簿価額に注意すべき点がないか
東京証券取引所も市場評価を見る基準について、PBR1倍だけに限定せず、市場平均や業種平均などを使う考え方を示しています。
「BPSが高い会社なら倒産しにくい」と考えるのは危険です。帳簿上に十分な純資産や利益があっても、支払いに必要な現金が不足すれば経営は行き詰まります。最後にBPSだけでは見えない財務リスクを確認します。



