ボラティリティの計算方法
過去の値動きから求めるヒストリカル・ボラティリティでは、一般に日々の収益率を計算し、その標準偏差を年率換算します。価格差をそのまま使う方法もありますが、金融実務では価格の比率を扱いやすい対数収益率がよく用いられます。
基本的な計算手順
- 対象期間の日次終値を用意する
- 各日の対数収益率「ln(当日の終値÷前日の終値)」を求める
- 日次収益率の標準偏差を求める
- 日次標準偏差に「√252」を掛け、年率換算する
- パーセント表示にする場合は100を掛ける
式を簡略化すると、次のように表せます。
年率ボラティリティ = 日次収益率の標準偏差 × √252 × 100
252は1年間の取引日数として使われる代表的な仮定です。市場、データ提供元、営業日数の設定によって250や260など別の値を使う場合もあります。複数銘柄を比較するときは、期間、価格データ、収益率の種類、標準偏差の計算方法、年率換算の前提をそろえなければ、公平な比較になりません。
簡単なイメージ
ある銘柄の日次収益率の標準偏差が1%だったとします。252営業日を前提にすると、√252は約15.87なので、年率ボラティリティはおおむね15.9%です。ただし、これは「1年間で必ず15.9%上がる・下がる」という意味ではありません。日々の変動のばらつきを年率に換算した統計値です。
表計算ソフトで計算するときの注意
ExcelやGoogleスプレッドシートでは、終値を時系列で並べ、対数収益率を作り、標準偏差関数を利用すれば計算できます。ただし、標本標準偏差と母標準偏差では結果がわずかに異なります。比較目的なら、どちらを使うかを統一してください。株式分割、配当、権利落ちなどの影響を調整していない価格を使うと、実態以上に大きな変動として計算される場合があります。
ボラティリティが高い銘柄とは
ボラティリティが高い銘柄とは、一定期間の価格変動が相対的に大きい銘柄です。ただし、「常に高い銘柄」の固定リストがあるわけではありません。決算、業績予想の修正、新製品、資金調達、規制、需給、時価総額、取引量、市場全体の急変などによって順位は変わります。
高くなりやすい場面
- 決算発表や重要な経営発表の前後
- 業績の見通しが大きく変化したとき
- 取引参加者が少なく、売買が一方向に偏ったとき
- 新興企業や事業変化の大きい企業に注目が集まったとき
- 市場全体で不確実性が急上昇したとき
小型株や新興株は値動きが大きくなる場合がありますが、すべてが高ボラティリティとは限りません。大型株でも、重大な発表や市場混乱によって急変することがあります。会社の規模だけで判断せず、実際のデータを確認する必要があります。
ボラティリティランキングの正しい見方
ランキングを見る際は、順位よりも算出条件が重要です。同じ銘柄でも20日、60日、250日のどれを使うかで順位は変わります。日次データと週次データでも結果は異なります。
確認したい5項目
- 計算期間:短期の急変を見たいのか、長期的な性質を見たいのか
- 年率換算:何営業日を前提にしているか
- 価格調整:株式分割や配当を反映した調整後価格か
- 流動性:売買代金や出来高が十分か
- 異常値:一日だけの急騰・急落が順位を押し上げていないか
高ボラティリティランキングは「儲かりやすさランキング」ではありません。上昇余地だけでなく下落幅も大きくなる可能性があり、売買価格の差が広がったり、希望価格で約定しにくくなったりする場合があります。
ボラティリティツールで確認できること
証券会社の取引画面、チャートサービス、オプション情報サイト、表計算ソフトなどでは、ヒストリカル・ボラティリティ、インプライド・ボラティリティ、IVランク、IVパーセンタイル、ATRなどを確認できる場合があります。
- HV:過去の値動きの大きさ
- IV:オプション市場が織り込む予想変動率
- IVランク:一定期間の最高IVと最低IVの間で、現在値がどこにあるか
- IVパーセンタイル:過去の観測値のうち、現在より低かった割合
- ATR:窓開けも考慮した値幅の平均。通常は価格単位で表示される
ツールごとにデータ更新時刻、計算期間、欠損値の処理、年率換算方法が異なることがあります。複数サービスの数字が違っていても、直ちに誤りとは限りません。比較前に仕様を確認してください。
実は、ボラティリティを売買判断に使うときには、数値の高さ以上に重要な落とし穴があります。株・FXでの活用法とボラティリティドラッグは次のページで解説します。



