受益証券発行信託とは?仕組み・JDR・不動産ST・税金・確定申告までわかりやすく解説

受益証券発行信託とJDRの関係

JDRは、Japanese Depositary Receiptの略で、日本型預託証券と呼ばれます。

外国企業の株式、外国ETF、外国債券などを日本国内の信託銀行等へ信託し、その外国有価証券を裏付けとして、日本国内で受益証券を発行する仕組みです。

制度上、JDRは外国有価証券を信託財産とする受益証券発行信託の受益証券です。ADRやGDRのように預託証券と呼ばれていますが、日本の法律上は受益証券として扱われます。

JDRの基本的な流れ

  1. 外国企業などが株式・ETF・債券等を発行する
  2. 対象となる外国有価証券を日本の信託銀行等へ信託する
  3. 信託銀行等がJDRとなる受益証券を発行する
  4. 受益証券を東京証券取引所などへ上場する
  5. 国内投資家が円建てで売買する
  6. 外国有価証券の配当等が信託を通じて分配される

JDRのメリット

  • 国内株式と近い方法で外国有価証券を売買できる
  • 国内の証券取引所で円建て取引ができる
  • 証券会社の特定口座で取り扱われる商品がある
  • 国内の売買・決済インフラを利用できる

JDRの注意点

  • 裏付けとなる外国有価証券の価格変動を受ける
  • 為替相場によって円換算した価値が変動する
  • 信託報酬や管理費用などが発生する場合がある
  • 原資産を直接保有する場合と権利行使方法が異なることがある
  • 原資産の市場と日本市場の取引時間が異なる
  • 上場廃止や信託終了により償還される可能性がある

JDRの受託者が商品の信用や元本を保証するわけではありません。原資産や発行体のリスクは、原則として投資家が負います。

受益証券発行信託とセキュリティトークンの関係

セキュリティトークンは、株式、社債、信託受益権などの有価証券に関する権利を、ブロックチェーンなどの分散型台帳技術を使って電子的に記録・移転する仕組みです。STと略され、STを使った資金調達はSTOと呼ばれます。

国内の資産裏付型STでは、受益証券発行信託を利用する商品が多く見られます。特に、不動産を投資対象とするSTで活用されています。

不動産STの一般的な仕組み

  1. 不動産または不動産信託受益権を信託財産へ組み入れる
  2. 信託財産から収益を受ける受益権を小口化する
  3. 受益権を表すセキュリティトークンを発行する
  4. 証券会社などを通じて投資家へ販売する
  5. 賃料収入や不動産売却代金などから分配・償還を行う

商品によっては紙の受益証券を発行せず、受益権原簿と電子的な記録によって保有者や移転状況を管理します。

セキュリティトークンは暗号資産ではありません。裏付けとなる権利が有価証券に該当する場合、金融商品取引法に基づく販売・開示規制の対象になります。

不動産STのメリット

  • 大型不動産などを小口化して投資できる
  • 保有者や権利移転の情報を電子的に管理できる
  • 従来の不動産信託受益権より売買手続きを効率化できる場合がある
  • 投資対象となる不動産が明示された商品が多い

不動産STのデメリット

  • 元本保証ではない
  • 空室、賃料低下、修繕費増加などの影響を受ける
  • 不動産価格の下落により償還額が減少する可能性がある
  • 途中売却できる場所や相手が限られる場合がある
  • 運用・信託・システムなど複数の費用が差し引かれる
  • 電子システムの障害や不正アクセスに関するリスクがある

STARTで取引できる商品もある

大阪デジタルエクスチェンジが運営するSTARTでは、一定の基準を満たすセキュリティトークンが取り扱われています。

ただし、発行されたすべてのSTをSTARTで売買できるわけではありません。STARTの取扱銘柄であっても、利用する証券会社が注文の取次ぎに対応している必要があります。

受益証券発行信託のメリット

さまざまな財産を小口化できる

不動産や外国有価証券など、そのままでは高額または取引手続きが複雑な財産を、複数の受益権に分けて投資対象にできます。

権利関係を明確に管理しやすい

受益証券や受益権原簿によって、受益者、口数、権利内容などを管理できます。電子化された商品では、権利移転の履歴も記録されます。

信託財産が分別される

信託財産は、原則として受託者や委託者の固有財産と分けて管理されます。ただし、投資対象自体の価格下落や収益悪化は防げません。

市場で流通できる場合がある

JDRのように証券取引所へ上場する商品や、STARTなどの市場で取引されるSTは、一定の流通機会があります。

受益証券発行信託のデメリット

仕組みと関係者が複雑

委託者、受託者、証券会社、資産運用会社、原資産の管理会社、電子プラットフォームなど、複数の関係者が参加する商品があります。

各社へ支払われる費用は信託財産から差し引かれることがあり、投資家の受取額へ影響します。

価格が分かりにくい商品がある

上場商品は市場価格を確認できますが、非上場STなどは日々の市場価格が表示されない場合があります。

不動産鑑定評価額や基準価額が示されていても、その金額で必ず売却できるとは限りません。

換金性が低い場合がある

途中売却ができない商品、指定された証券会社を通じてのみ売却できる商品、一定期間の譲渡制限がある商品があります。

信託終了時に損失が生じる可能性がある

信託期間が満了すると、信託財産の売却代金などを基に償還が行われます。原資産の売却価格が想定を下回れば、償還額が投資額を下回る可能性があります。

特定受益証券発行信託とは?

特定受益証券発行信託は、受益証券発行信託のうち、法人税法上の要件を満たす信託です。

税務署長の承認を受けた受託者が受託することなど、法令で定められた条件を満たす必要があります。「特定」という言葉は、特定の投資対象に限定するという意味ではなく、税法上の区分を表しています。

特定受益証券発行信託は、税務上、投資信託などと同様に集団投資信託へ分類されます。信託段階ではなく、受益者へ収益を分配する段階を中心に課税する仕組みが採用されています。

すべての受益証券発行信託が「特定」ではない

信託法上の受益証券発行信託と、税法上の特定受益証券発行信託は同じ範囲ではありません。

商品説明書に「受益証券発行信託」と書かれていても、税務上の扱いを判断する際は、特定受益証券発行信託に該当するか、公募か私募か、上場しているかなどを確認する必要があります。

受益証券発行信託では、分配金と売却益で所得区分が異なります。さらに、配当控除が使えないケースや、特定口座へ入らない商品もあるため注意が必要です。