譲渡益の確定申告で扶養から外れることはある?
株式等の譲渡益は、申告方法によって税法上の扶養判定に影響することがあります。
特定口座の源泉徴収ありで、譲渡所得を確定申告しないことを選択した場合、その申告不要とした所得は、原則として税法上の合計所得金額に含まれません。
一方、損益通算や税金の還付を受けるために確定申告をすると、申告した譲渡所得等が合計所得金額に含まれます。その結果、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除などの所得要件に影響する可能性があります。
申告によって税金が還付されても、家族が受けていた所得控除が減ると、世帯全体の税負担が増える場合があります。還付額だけで判断せず、家族の所得控除への影響も確認することが大切です。
社会保険上の扶養は別の基準で判定される
税法上の扶養と、健康保険上の被扶養者制度は別の制度です。
健康保険上の扶養では、投資による利益を収入としてどのように扱うかが、加入する健康保険組合や共済組合などによって異なる場合があります。源泉徴収ありで確定申告をしない場合でも、健康保険上の判定に影響しないとは断定できません。
被扶養者になっている場合は、加入先の健康保険組合などへ確認してください。
譲渡益は住民税非課税世帯の判定に影響する?
住民税非課税世帯とは、世帯全員が住民税の非課税要件を満たしている世帯です。非課税となる所得基準は、家族構成や自治体の基準などによって異なります。
特定口座の源泉徴収ありの譲渡所得を申告不要とした場合は、原則として住民税の合計所得金額に算入されません。
しかし、譲渡所得を確定申告すると、その所得が住民税の所得計算に含まれ、次のような制度に影響する可能性があります。
- 住民税の非課税判定
- 国民健康保険料
- 後期高齢者医療保険料
- 介護保険料
- 扶養控除や配偶者控除
- 所得基準が設けられた給付金や行政サービス
令和5年分以後の上場株式等の配当所得・譲渡所得については、所得税と住民税で異なる課税方式を選ぶことができません。所得税の確定申告に含めた場合は、住民税でも申告した所得として扱われます。
税金の還付を受けられる場合でも、保険料や給付制度への影響を含めると、確定申告をしないほうが家計全体では有利になることがあります。具体的な影響は自治体や加入制度によって異なるため、申告前に確認しましょう。
「譲渡益税徴収・還付のお知らせ」が届く理由
証券会社から交付される「譲渡益税徴収・還付のお知らせ」は、特定口座の源泉徴収税額が計算または再計算され、税金の徴収や還付が行われたことを知らせる書面です。
通知が交付される主な理由には、次のようなものがあります。
- 株式等の売却によって年間の譲渡益が増えた
- 後の売却で損失が発生し、過徴収分が還付された
- 取得価額や取引内容の訂正によって税額が変わった
- 口座移管などに伴って取得価額が再計算された
- 特定口座内の配当等と譲渡損失が損益通算された
通知が届いた場合は、取引履歴、譲渡益税明細、入出金明細などを確認し、実際の徴収額や還付額と照らし合わせましょう。通知の名称や交付条件は証券会社によって異なります。
SBI証券で譲渡益税を確認する方法
SBI証券では、特定口座内の実現損益や譲渡益税の徴収・還付を「譲渡益税明細」で確認できます。
公式案内では、PCサイトの「口座管理」から「取引履歴」へ進み、「譲渡益税明細」を選択する方法が案内されています。指定した期間の損益金額、譲渡益税徴収額、還付金額などを確認できます。
SBI証券の特定口座では、譲渡の都度、年初からの譲渡損益を再計算し、利益が発生した場合は源泉徴収、損失によって過徴収となった場合は還付が行われます。
特定口座内で受け入れた配当等と譲渡損失を損益通算した結果による還付は、通常の売却損益に伴う還付とは入金時期が異なる場合があります。
楽天証券で譲渡益税を確認する方法
楽天証券では、特定口座の源泉徴収履歴や年間損益を「特定口座損益(譲渡益税)」などの画面で確認できます。
公式案内では、PCサイトへログインした後、「マイメニュー」から口座管理内の「特定口座損益(譲渡益税)」へ進む方法が案内されています。
画面では、特定口座の譲渡損益や源泉徴収税額などを確認できます。複数の証券会社にまたがる損益は自動通算されないため、他社口座の損失と相殺したい場合は確定申告が必要です。
証券会社の画面名称や操作手順は変更されることがあるため、実際に確認する際は各社の最新案内を参照してください。
譲渡益税の計算で確認したい注意点
同じ年でも約定日と受渡日が異なる場合がある
年末に株式を売却すると、売買が成立した約定日と、代金や株式の受け渡しが行われる受渡日が年をまたぐ場合があります。
特定口座年間取引報告書や譲渡益税の対象年を確認するときは、証券会社が案内する受渡日ベースの取扱いを確認しましょう。
取得価額が不明だと正しい利益を計算できない
相続した株式、他社から移管した株式、古くから保有している株式などでは、取得価額の確認が必要になることがあります。
取得価額が正しく登録されていないと、想定より大きな譲渡益が計算される可能性があります。取引報告書、顧客勘定元帳、相続時の資料などを確認し、必要に応じて証券会社や税務署へ相談してください。
還付金は投資損失を補償するものではない
譲渡益税還付金として戻るのは、すでに徴収された税金のうち払い過ぎとなった部分です。
100万円の損失が発生したからといって、その20.315%が必ず現金で戻るわけではありません。その年に課税対象となる利益や、すでに徴収された税金がなければ、口座内での還付は発生しません。
譲渡益税還付金を確認したときのチェック項目
- 口座区分が特定口座の源泉徴収ありになっているか
- 直前の売却で譲渡損失が発生していないか
- 年初からの累計損益はいくらになっているか
- すでに徴収されていた譲渡益税はいくらか
- 配当金や分配金を特定口座で受け入れているか
- 他社口座に通算できる損失がないか
- 確定申告による扶養や保険料への影響がないか
譲渡益税還付金は、特定口座で徴収された税金を年間損益に合わせて調整した結果として戻るお金です。口座に入金があったときは、譲渡益税明細を確認すると、どの取引によって税金が徴収・還付されたのかを把握しやすくなります。
源泉徴収ありの特定口座は原則として確定申告不要ですが、複数口座の損益通算や損失の繰越控除を利用する場合は申告が必要です。ただし、申告すると住民税、扶養、国民健康保険料、住民税非課税世帯の判定などに影響する可能性があります。還付される税額だけでなく、世帯全体への影響を確認したうえで判断しましょう。
<参考サイト>国税庁 / 金融庁 / 札幌市 / 名古屋市 / 岡山市 / 川崎市 / SBI証券 / 楽天証券



