配当落調整金の仕訳と勘定科目
個人が特定口座で株式投資を行っている場合、通常は証券会社が年間損益を計算するため、配当落調整金について複式簿記の仕訳を作成する必要はありません。
一方、法人が信用取引を行う場合は、証券会社の取引報告書に基づいて帳簿へ記録します。
使用する勘定科目は会社の会計方針によって異なりますが、次のような科目が用いられます。
- 有価証券運用益
- 有価証券運用損
- 有価証券売買損益
- 信用取引損益
- 雑収入・雑損失
- 証券会社への預け金
継続的に有価証券取引を行う法人では、雑収入や雑損失ではなく、有価証券運用損益などの専用科目を使うと取引内容を把握しやすくなります。
信用買いで受け取った場合の簡略仕訳例
信用買い建玉について84,685円の配当落調整金を受け取り、証券会社の預け金へ入金された場合の簡略例です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 預け金 | 84,685円 | 有価証券運用益 | 84,685円 |
税務上は、信用買いを行った者が受け取る配当落調整額を、買付けに係る上場株式等の取得価額から控除する取扱いです。会計ソフト上の記録と税務上の計算が一致するかを確認する必要があります。
信用売りで支払った場合の簡略仕訳例
一般信用売りについて100,000円の配当落調整金が証券会社の預け金から差し引かれた場合の簡略例です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 有価証券運用損 | 100,000円 | 預け金 | 100,000円 |
税務上、信用売りを行った者が支払う配当落調整額は、上場株式等の譲渡に係る収入金額から控除します。
法人の会計処理は、売買目的有価証券、ヘッジ取引、決算日の未決済建玉などによって複雑になる場合があります。重要な取引については、公認会計士や税理士へ確認してください。
配当落調整金に消費税はかかる?
配当落調整金は、商品やサービスの提供に対する対価ではなく、信用取引における配当落ちの経済的な差を調整する金銭です。
そのため、通常は消費税の課税対象として処理する性質のものではありません。
ただし、信用取引に伴って証券会社へ支払う売買委託手数料などは、配当落調整金とは別に消費税を含む場合があります。
クロス取引で確認すべき配当落調整金
株主優待を目的とするクロス取引では、同一銘柄を現物買いし、同じ株数を信用売りします。
株価変動による損益をおおむね相殺できますが、次の費用は残ります。
- 売買手数料
- 信用売りの貸株料
- 制度信用売りの逆日歩
- 配当落調整金
- 現物配当と配当落調整金の税務上の差
制度信用売りを使う場合
制度信用売りの配当落調整金は、一般に配当金の84.685%です。現物配当は税引後で79.685%となるため、入出金時点では約5%相当の差が生じます。
ただし、制度信用売りでは株不足時に逆日歩が発生する可能性があります。逆日歩は売建時点で金額を確定できません。
一般信用売りを使う場合
一般信用売りでは制度信用の逆日歩はありませんが、配当落調整金として配当金の100%を支払う取扱いが一般的です。
現物配当の税引後受取額との差が大きくなるため、年間の譲渡損益や税金の還付まで含めて確認する必要があります。
配当落調整金で不足金が発生するケース
信用売りの配当落調整金は、企業の配当支払時期に証券口座から差し引かれます。
次のような場合は不足金が発生する可能性があります。
- 信用建玉を返済した後、証券口座から現金を全額出金した
- 配当予想が増額修正され、支払額が想定より増えた
- 複数銘柄の配当落調整金が同時期に発生した
- 口座内の現金を現物株や投資信託の購入へ使った
- 信用取引の決済損や金利も同時に差し引かれた
不足金を期限までに解消できない場合、取引制限や保有商品の売却が行われる可能性があります。
売建玉を権利日まで保有した場合は、決済後も企業の予想配当額に応じた現金を口座へ残しておくと管理しやすくなります。
配当落調整金でよくある誤解
信用買いでも企業から配当金を受け取れる?
信用買いでは株主名簿上の株主にならないため、企業から配当金を直接受け取るわけではありません。証券会社から配当落調整金を受け取ります。
信用買いなら株主優待も受け取れる?
通常は受け取れません。株主優待や議決権は、原則として現物株主に与えられる権利です。
売建玉を決済すれば配当落調整金を払わなくてよい?
権利付き最終日までに決済すれば、通常は支払いを回避できます。しかし、権利日をまたいだ後に決済しても支払義務は残ります。
一般信用なら配当落調整金は発生しない?
発生します。一般信用売りでは逆日歩は発生しませんが、配当落調整金は別の権利処理です。
配当落調整金から所得税が源泉徴収されている?
制度信用の計算で差し引かれる15.315%は、投資家本人から実際に源泉徴収した税金ではなく、源泉徴収税額に相当する調整額です。
配当落調整金はNISAで非課税になる?
NISA口座では信用取引を行えません。配当落調整金は課税口座の信用取引に伴う譲渡所得等へ反映されるため、NISAの非課税対象にはなりません。
配当落調整金の確認方法
配当落調整金は、証券会社の次の画面や書類で確認できます。
- 入出金明細
- 信用取引の諸経費明細
- 譲渡益税明細
- 取引残高報告書
- 特定口座年間取引報告書
「配当金・分配金」の画面には、現物配当と信用配当落調整金が別々に表示される場合があります。配当金額、税額、受取金額の欄が空欄になり、信用配当落調整金の受取額だけが表示される証券会社もあります。
配当落調整金のチェックリスト
- 信用建玉が権利付き最終日をまたいだか
- 制度信用か一般信用か
- 買建玉か売建玉か
- 会社の確定配当額はいくらか
- 証券会社が適用する割合は何%か
- 入出金予定日はいつか
- 決済済み建玉の支払予定が残っていないか
- 委託保証金現金が不足していないか
- 特定口座か一般口座か
- 配当所得ではなく譲渡所得等へ反映されているか
- 別口座との損益通算に確定申告が必要か
- クロス取引の貸株料・逆日歩も含めて計算したか
配当落調整金に関するよくある疑問
配当落調整金はいつ確定しますか?
企業が配当額を正式に決定した後に確定します。期末配当は株主総会、中間配当などは取締役会の決議で決まる場合があります。
配当予想が変更されたらどうなりますか?
最終的に企業が決定した配当額を基に計算されます。増配されれば信用売りの支払額が増え、減配されれば支払額が減ります。無配になれば、原則として配当落調整金も発生しません。
配当落調整金を受け取るためだけに信用買いするのは有利ですか?
一律に有利とはいえません。権利落ち日に株価が配当相当分以上下落する場合があり、買方金利や名義書換料なども発生します。
支払った配当落調整金は経費になりますか?
個人の株式税務では、一般的な事業経費ではなく、上場株式等の譲渡所得等の計算へ反映されます。法人では、信用取引に関する有価証券運用損益などとして処理する方法があります。
配当落調整金に配当控除は使えますか?
使えません。配当所得ではないためです。
配当落調整金の支払額は年間取引報告書に反映されますか?
特定口座内の信用建玉に係る配当落調整金は、通常、特定口座内の譲渡所得等の計算へ含められます。証券会社が交付する年間取引報告書の譲渡損益を確認してください。
まとめ:配当落調整金は配当金ではなく譲渡損益へ反映される
配当落調整金とは、配当の権利確定日をまたいで信用建玉を保有した場合に、信用買いの買い方が受け取り、信用売りの売り方が支払う配当相当額です。読み方は「はいとうおちちょうせいきん」です。
制度信用取引では、配当金から15.315%の税金相当額を差し引いた84.685%を授受します。一般信用取引の条件は証券会社との契約で決まり、主要ネット証券では一般信用売りの支払額を配当金の100%としている例があります。
配当落調整金は税法上の配当所得ではありません。信用買いの受取額と信用売りの支払額は、原則として上場株式等の譲渡所得等の計算へ反映されます。そのため、配当控除の対象にはなりません。
特定口座の源泉徴収ありでは、証券会社が配当落調整金を含めて税額を計算するため、通常は申告不要です。ただし、他社口座との損益通算や損失の繰越控除を行う場合は、確定申告が必要になります。
売建玉を返済した後でも、権利日をまたいでいれば数か月後に配当落調整金が差し引かれます。口座から資金をすべて出金すると不足金が発生する可能性があるため、配当支払時期まで必要額を確保しましょう。
本記事は、国内株式の信用取引、配当落調整金および税務に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の証券会社、銘柄、取引方法を推奨するものではありません。税務上の取扱いは口座区分、居住状況、法人・個人の別、ほかの所得によって異なる場合があります。実際の申告や法人の仕訳については、証券会社の年間取引報告書、国税庁の最新情報を確認し、必要に応じて税務署、税理士、公認会計士へ相談してください。
<参考サイト>
国税庁 / 日本取引所グループ(JPX) / 東京証券取引所 / 金融庁 / 日本証券業協会 / SBI証券 / 楽天証券 / マネックス証券




