株価収益率が高い・低いとはどういう意味?
一般的に、PERが高い企業は利益に対して株価が高く、PERが低い企業は利益に対して株価が低いと説明されます。
ただし、「高い=割高」「低い=割安」と機械的に判断することはできません。PERには、企業の成長期待、利益の安定性、事業リスク、金利、市場全体の投資家心理などが反映されるためです。
PERが高くなる主な理由
- 将来の利益成長に対する期待が高い
- 新しい市場や事業の拡大が期待されている
- 利益が安定しており、事業リスクが低いと評価されている
- 一時的な費用によって直近のEPSが小さくなっている
- 株価が短期間に大きく上昇している
例えば、現在の利益が小さくても、将来大きく成長すると期待されている企業は、高いPERで取引されることがあります。将来のEPSが増加すれば、株価が変わらなくてもPERは低下します。
一方、期待された成長を実現できなければ、業績予想の下方修正と株価下落が同時に起こる可能性があります。高いPERは成長期待の表れであると同時に、期待外れになったときの値下がりリスクも含んでいます。
PERが低くなる主な理由
- 今後の減益や業績悪化が警戒されている
- 事業の成長率が低いと評価されている
- 財務や経営に関する不確実性がある
- 株価が大きく下落している
- 一時的な利益によってEPSが大きくなっている
- 景気循環によって利益が一時的な高水準にある
PERが低い企業には、利益と比べて株価が低く、割安と評価できる場合があります。しかし、市場が将来の減益や事業リスクを先に織り込んでいる可能性もあります。
低PERであることだけを理由に購入すると、その後にEPSが減少し、株価が変わらなくてもPERが上昇することがあります。株価と利益の両方を確認することが欠かせません。
株価収益率の目安は何倍?
PERに、すべての企業へ共通する絶対的な目安はありません。「PERが一定の倍率以下なら割安、一定以上なら割高」と一律に判断することはできません。
PERの適正水準は、業種、成長率、金利、景気、市場環境、利益の安定性によって異なります。同じPERでも、年率の高い利益成長が続く企業と、長期的な減益が予想される企業では意味が異なります。
PERを比較する4つの方法
- 同業他社との比較:同じ業界で似た事業を行う企業と比べる
- 業界平均との比較:所属業界の平均的なPERと比べる
- 過去の自社PERとの比較:同じ企業の過去の水準と比べる
- 市場全体との比較:市場指数や市場区分のPERと比べる
比較するときは、実績PERと予想PERを混ぜないことが重要です。連結と単体、調整後利益と会計上の利益など、計算の条件もそろえましょう。
株価収益率の業界平均を見る方法
日本取引所グループは、東京証券取引所に上場する企業について、各月末時点の規模別・業種別PERとPBRを公表しています。公表されている業種別PERは実績ベースです。
業界平均を使えば、同じような事業を行う企業の中で、対象企業のPERが相対的に高いか低いかを確認できます。ただし、平均値だけで投資判断を行うことは適切ではありません。
業界によって平均PERが違う理由
業界ごとに、利益の成長率、景気への反応、設備投資の規模、利益率、財務構造などが異なります。
成長期待が高い業界では、将来の増益を先に織り込み、平均PERが高くなることがあります。景気の影響を受けやすい業界では、現在の利益が高水準でも、将来の減益を見込んでPERが低くなる場合があります。
そのため、異なる業界に属する企業のPERを単純に比べても、適切な結論にならない可能性があります。まず同じ業界や似た収益構造の企業同士で比較しましょう。
平均値を見るときの注意点
- 実績PERか予想PERかを確認する
- 単純平均か時価総額加重平均かを確認する
- 赤字企業が集計にどう扱われているかを確認する
- データの基準日を確認する
- 一時的な利益が大きい企業の影響を確認する
市場環境と企業利益は変化するため、業界平均も固定された数字ではありません。古い平均値を現在の株価へそのまま当てはめないようにしましょう。
PERを計算できない企業もある
赤字企業のPER
EPSがマイナスとなる赤字企業では、通常、PERは有効な形で算出できません。計算上は負の値になりますが、利益に対して株価が何倍かを比較するというPER本来の意味が失われます。
金融情報画面では「-」「N/A」「算出不能」などと表示されることがあります。日本取引所グループの業種別統計でも、1株当たり当期純利益がマイナスの場合はPERを算出不能として扱っています。
EPSがゼロに近い企業
EPSがわずかな黒字の場合、PERは非常に大きな数字になります。例えば、株価が1,000円でEPSが1円なら、PERは1,000倍です。
この数字だけを見て極端に割高と判断するのではなく、利益が小さくなった理由を確認する必要があります。一時的な費用による減益であれば、翌期の利益回復によってPERが大きく変わる可能性があります。
一時的な特別利益がある企業
保有資産や子会社の売却などによって一時的な利益が発生すると、EPSが大きくなり、PERが通常より低く見えることがあります。
その利益が翌期以降も続くとは限りません。決算短信や有価証券報告書を確認し、本業による継続的な利益と、一時的な損益を分けて考える必要があります。
PERとPBRの違い
PERとよく比較される指標がPBRです。どちらも株価の相対的な水準を見る指標ですが、比較する対象が異なります。
| 項目 | PER | PBR |
|---|---|---|
| 日本語名 | 株価収益率 | 株価純資産倍率 |
| 英語 | Price Earnings Ratio | Price Book-value Ratio |
| 計算式 | 株価÷EPS | 株価÷BPS |
| 比較するもの | 株価と利益 | 株価と純資産 |
| 主な見方 | 収益力に対する株価水準 | 純資産に対する株価水準 |
PERは企業の利益を見る指標
PERは、企業が一定期間に生み出した利益と株価を比較します。利益は毎期変化するため、業績予想の修正によってPERも大きく動くことがあります。
PBRは企業の純資産を見る指標
PBRは、株価を1株当たり純資産で割って計算します。
PBR=株価÷1株当たり純資産(BPS)
PERが利益という「フロー」に注目するのに対し、PBRは決算時点で蓄積されている純資産という「ストック」に注目します。
PERとPBRは、どちらか一方だけを使うのではなく、企業の収益性、成長性、財務状態などと合わせて確認するための指標です。
実は、PERが同業他社より低くても、本当に割安とは限りません。次のページでは、初心者が避けたい誤解と、銘柄分析での実践的な使い方を解説します。





