配当落調整金とは?計算方法・税金・確定申告・損益通算をわかりやすく解説

配当落調整金とは、配当の権利確定日をまたいで信用取引の建玉を保有した場合に、信用買いの投資家と信用売りの投資家との間で授受される配当相当額です。現物株式の配当金とは税務上の扱いが異なり、配当所得ではなく、原則として上場株式等の譲渡所得等の計算へ反映されます。また、制度信用と一般信用では支払割合が異なる場合があり、クロス取引では現物配当との金額差にも注意が必要です。本記事では、配当落調整金の読み方、仕組み、計算、支払時期、税金、損益通算、確定申告、SBI証券・楽天証券の取扱例、法人の仕訳まで詳しく解説します。

資料を確認しながら資産や税金について計算するイメージ

この記事の目次

  • 配当落調整金の意味と読み方
  • 受取・支払が発生する条件
  • 制度信用と一般信用の計算方法
  • 配当落調整金が支払われる時期
  • 税金・譲渡所得・損益通算の扱い
  • 確定申告が必要になるケース
  • 二重課税に見える理由
  • SBI証券・楽天証券の取扱例
  • 法人の仕訳と勘定科目

配当落調整金とは?

配当落調整金とは、信用取引の建玉が配当の権利確定日をまたいだ場合に、信用買いの買い方が受け取り、信用売りの売り方が支払う配当相当額です。

証券会社によっては、次の名称で表示されることがあります。

  • 配当落調整金
  • 信用配当落調整金
  • 配当金相当額
  • 信用配当金

配当落調整金の読み方は「はいとうおちちょうせいきん」です。

現物株式の配当金とは異なる

現物株式を権利付き最終日まで保有すると、株主名簿に記録されるため、企業から配当金を受け取る権利を得ます。

一方、信用買いでは、株式を実質的に買っていても株主名簿上の株主にはなりません。そのため、企業から配当金を直接受け取るのではなく、証券会社を通じて配当落調整金を受け取ります。

保有方法 受け取る金銭 税務上の主な区分
現物株式 配当金 配当所得
信用買い 配当落調整金 上場株式等の譲渡所得等へ反映
信用売り 配当落調整金を支払う 上場株式等の譲渡損益へ反映

名称に「配当」と入っていますが、配当落調整金は企業が株主へ支払う配当金そのものではありません。

なぜ信用売りの投資家が支払うのか

信用売りでは、証券会社などから借りた株式を市場で売却します。借りた株式の本来の所有者は、株式を貸していなければ配当の経済的利益を得られたはずです。

そこで、信用売りの売り方から配当相当額を徴収し、信用買いの買い方へ支払うことで、配当落ちによる経済的な不公平を調整します。

信用買いと信用売りが同じ投資家の口座内で行われていても、それぞれの建玉について受取額と支払額が計算されます。

配当落調整金が発生する条件

配当落調整金は、信用取引を行っただけで必ず発生するわけではありません。原則として、次の条件を満たした場合に発生します。

  • 対象企業が配当を実施する
  • 配当の権利付き最終日から権利落ち日へ建玉を持ち越す
  • 信用建玉が配当の権利処理対象になる

権利付き最終日の前に建玉を返済した場合、通常、その建玉について配当落調整金は発生しません。

建玉をすでに決済していても後から発生する

権利確定日をまたいだ後に建玉を返済しても、配当落調整金の受取・支払義務は残ります。

配当額が確定し、企業から実際の配当金が支払われる時期になってから処理されるため、信用建玉を決済して数か月後に口座へ入金または出金されることがあります。

「現在は信用建玉がないから支払いは発生しない」とは限りません。過去に権利日をまたいだ売建玉がある場合は、将来の支払いに備える必要があります。

制度信用取引の配当落調整金

制度信用取引では、取引所が定める権利処理方法に基づき、1株当たり配当金から所得税および復興特別所得税に相当する15.315%を差し引いた金額を授受します。

制度信用の配当落調整金=1株当たり配当金×84.685%×対象株数

84.685%は、100%から15.315%を差し引いた割合です。

制度信用の計算例

1株当たり配当金が100円で、制度信用の建玉を500株保有していた場合を考えます。

100円×84.685%×500株=42,342.5円

実際には証券会社の端数処理方法に基づいて金額が決定されます。

  • 制度信用買い:配当落調整金を受け取る
  • 制度信用売り:同額の配当落調整金を支払う

差し引かれる15.315%は、信用買いの投資家から実際に源泉徴収された所得税ではなく、制度信用取引の調整額を計算するための税金相当額です。

一般信用取引の配当落調整金

一般信用取引の権利処理方法は、投資家と証券会社との契約により決まります。そのため、すべての証券会社で同じ計算になるとは限りません。

主要ネット証券では、一般信用買いの受取額を配当金の84.685%、一般信用売りの支払額を配当金の100%としている例があります。

信用取引区分 受取・支払割合の代表例
制度信用買い 配当金の84.685%を受け取る
制度信用売り 配当金の84.685%を支払う
一般信用買い 配当金の84.685%を受け取る例がある
一般信用売り 配当金の100%を支払う例がある

一般信用取引では証券会社ごとに契約条件が異なるため、実際の割合は信用取引規程や取引画面で確認してください。

一般信用売りの計算例

1株当たり配当金100円の銘柄を、一般信用で500株売り建てて権利日をまたいだ場合、支払割合が100%なら次の金額を負担します。

100円×100%×500株=50,000円

制度信用売りの代表的な計算額42,342.5円より、一般信用売りの支払額が大きくなります。

配当落調整金はいつ支払われる?

配当落調整金は、権利落ち日にすぐ入出金されるわけではありません。原則として、企業の配当金額が確定し、実際の配当支払いが始まった後に証券会社が処理します。

3月末を権利確定日とする期末配当の場合、企業の株主総会後となる5月から6月頃に配当金が支払われるケースが多くあります。その後、証券会社の処理を経て配当落調整金が入出金されます。

証券会社によって処理時期が異なる

2026年7月時点で公表されている例では、楽天証券は配当支払開始日からおおよそ5営業日後に入金すると案内しています。

SBI証券では、株主総会の決議による場合は株主総会の1~2週間後、取締役会の決議による場合は配当金支払開始日の1~2週間後を目安としています。

銘柄、決議方法、証券会社の処理状況によって前後するため、すべての配当落調整金に共通する入出金日はありません。

入出金前に必要額が拘束される場合がある

一般信用の売建玉では、予想配当額を基に、将来支払う配当落調整金が信用余力から事前に差し引かれる場合があります。

実際の配当額が会社予想から変更されれば、確定後に拘束額や支払額も調整されます。

配当落調整金は配当所得ではないため、現物配当と同じ方法で確定申告すると税額計算を誤る可能性があります。税務上の扱いと損益通算は次のページで確認しましょう。